行政書士試験(11月8日)まで、あと1週間。国家賠償法は条文が6条しかないのに、毎年のように択一か多肢選択で出てきます。ここで迷いやすいのが、1条(公務員の違法な行為)と2条(道路や河川などの欠陥)の違いです。「責任の種類」と「求償できる相手」の2点で区別すると、肢の判断が速くなります。
前提:国家賠償法は「誰が払うか」を決めた法律
国や公共団体の活動で損害を受けた人が、国や公共団体に賠償を求めるための法律です。中心は次の2つの条文です。
- 1条…公権力の行使にあたる公務員が、職務を行うについて、故意または過失によって違法に他人に損害を加えたとき
- 2条…道路、河川その他の公の営造物の設置または管理に瑕疵があったために、他人に損害が生じたとき
どちらも、賠償するのは国または公共団体です。被害者が公務員個人に直接請求することは、判例上できません(最判昭和30年4月19日)。
試験で問われること
1. 1条は過失責任、2条は無過失責任
1条は「故意又は過失によつて」と書かれているので過失責任です。2条には過失の文言がなく、営造物が通常有すべき安全性を欠いていれば、管理者に過失がなくても責任を負います(無過失責任)。高知落石事件(最判昭和45年8月20日)は、道路の防護柵の費用が足りなかったとしても、それで責任を免れることはできないとしました。
2. 求償できる相手がちがう
1条2項:公務員に故意または重大な過失があったときだけ、国や公共団体は公務員に求償できます。軽過失なら求償できません。
2条2項:損害の原因についてほかに責任を負う者(たとえば欠陥工事をした業者)がいるとき、その者に求償できます。
3. 「職務を行うについて」は外から見て判断する
非番の警察官が制服を着て強盗をした事件で、判例は、客観的に職務執行の外形をそなえる行為なら「職務を行うについて」にあたるとしました(外形標準説、最判昭和31年11月30日)。公務員本人に職務の意思がなくても1条の責任が生じうる、という肢がよく出ます。
4. 河川は道路と同じではない
大東水害訴訟(最判昭和59年1月26日)は、河川はもともと自然の危険をはらむもので、改修には時間と予算がかかるため、改修途中の河川は「過渡的な安全性」で足りるとしました。道路の高知落石事件と対で覚えると混ざりません。
1条と2条を表で比べる
| 1条(公権力の行使) | 2条(営造物の設置・管理) | |
|---|---|---|
| 原因 | 公務員の違法な行為 | 道路・河川などの設置・管理の瑕疵 |
| 責任の性質 | 過失責任(故意・過失が必要) | 無過失責任 |
| 求償の相手 | 故意・重過失のある公務員 | ほかに原因の責任を負う者 |
| 代表判例 | 外形標準説(昭和31年) | 高知落石(道路)・大東水害(河川) |
3条〜6条もまとめて押さえる
- 3条…公務員の選任・監督者や営造物の管理者と、費用負担者が違うときは、費用負担者も賠償責任を負う(被害者はどちらにも請求できる)
- 4条…この法律に定めのないことは民法による(過失相殺、消滅時効など)
- 5条…ほかの法律に別段の定めがあればそちらによる
- 6条…外国人が被害者のときは、相互の保証があるときに限って適用(相互保証主義)
結論
1条は「過失責任・求償は故意重過失のある公務員へ」、2条は「無過失責任・求償はほかの原因者へ」。この2行を覚えたうえで、外形標準説・高知落石・大東水害の3つの判例を結論だけ押さえれば、直前期の国家賠償法は十分です。
同じ行政救済法の分野では、抗告訴訟の準用の整理と行政不服審査法の5つのポイントも直前の見直しに使えます。直前期の教材の絞り方は直前期は教材を3つに絞るに、全体の流れは行政書士のまとめページにまとめています。

コメント