行政書士試験(11月8日)まで、あと8日。行政事件訴訟法の「仮の救済」は、執行停止・仮の義務付け・仮の差止めの3つが似ていて、直前期に混ざりやすいところです。私はこの3つを「損害の言葉」と「本案の見込みの書き方」の2点で区別しています。条文の言葉どおりに、表で整理します。
前提:取消訴訟を起こしても、処分は止まらない
行政事件訴訟法25条1項は、処分の取消しの訴えを起こしても、処分の効力・処分の執行・手続の続行は妨げられない、と定めています(執行不停止の原則)。だから「判決が出るまでの間、どうにかして止めたい・先に認めてほしい」というときのために、仮の救済が用意されています。
- 執行停止(25条)…今ある処分を一時的に止める。取消訴訟(無効等確認訴訟も)とセット
- 仮の義務付け(37条の5第1項)…まだされていない処分を、仮にさせる。義務付けの訴えとセット
- 仮の差止め(37条の5第2項)…これからされそうな処分を、仮に止める。差止めの訴えとセット
3つとも、本案の訴えを起こしていることが前提で、申立てがあって初めて裁判所が判断します(職権ではできません)。
試験で問われること
1. 損害の言葉がちがう
ここが一番の引っかけです。執行停止は「重大な損害を避けるため緊急の必要があるとき」。仮の義務付け・仮の差止めは「償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があり」です。まだ処分がない段階で裁判所に先回りしてもらう分、仮の義務付け・仮の差止めのほうが要件が重くなっています。
なお、本案の非申請型の義務付けの訴え・差止めの訴えの訴訟要件は「重大な損害」です。「本案は重大、仮は償うことのできない」とセットで覚えると混ざりません。
2. 本案の見込みは「どちらが言うか」がちがう
執行停止は、「本案について理由がないとみえるとき」はすることができない(25条4項)。つまり、できない理由として書かれています。仮の義務付け・仮の差止めは、「本案について理由があるとみえるとき」が要件として書かれています。肢で「本案について理由があるとみえるときでなければ、執行停止をすることができない」と出たら×です。
3. 公共の福祉と内閣総理大臣の異議は共通
3つとも、公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるときはできません。内閣総理大臣の異議(27条)も、仮の義務付け・仮の差止めに準用されています(37条の5第4項)。
3つを表で比べる
| 執行停止 | 仮の義務付け | 仮の差止め | |
|---|---|---|---|
| 本案の訴え | 取消訴訟(無効等確認訴訟にも準用) | 義務付けの訴え | 差止めの訴え |
| 損害の要件 | 重大な損害 | 償うことのできない損害 | 償うことのできない損害 |
| 本案の見込み | 理由がないとみえるときはできない | 理由があるとみえることが要件 | 理由があるとみえることが要件 |
| 公共の福祉 | 重大な影響のおそれがあればできない | 同じ | 同じ |
| 申立て | 必要(職権不可) | 必要 | 必要 |
| 内閣総理大臣の異議 | あり(27条) | 準用あり | 準用あり |
| 第三者効 | 執行停止の決定にも準用(32条2項) | 準用なし | 準用なし |
あわせて押さえたい細かい点
- 処分の効力の停止は、処分の執行や手続の続行の停止で目的を達することができる場合はできない(25条2項ただし書)
- 決定は疎明にもとづいて行う(25条5項)
- 口頭弁論を経ないですることができるが、あらかじめ当事者の意見を聴かなければならない(25条6項)
- 「重大な損害」かどうかは、損害の回復の困難の程度を考慮し、損害の性質・程度や処分の内容・性質も勘案して判断する(25条3項)
第三者効や拘束力の準用の全体像は「抗告訴訟の準用を一覧表で整理」に、行政不服審査法とあわせた弱点つぶしは「行政不服審査法が苦手な人へ」にまとめています。
結論
執行停止は「重大な損害」で、本案は「理由がないとみえるときはできない」。仮の義務付け・仮の差止めは「償うことのできない損害」で、本案は「理由があるとみえる」ことが要件。この2点の言葉の違いを押さえれば、仮の救済の肢はかなり切れます。直前期は、肢別過去問の該当箇所を、条文の言葉と照らしながら回すのがおすすめです。行政書士の記事の一覧は「行政書士まとめ」にあります。

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