行政書士試験まで、残り4日です。行政法の択一で毎年のように問われるのが「処分性」、つまりその行為が取消訴訟の対象になる「処分」にあたるかどうか、という論点です。
直前期は判例を1本ずつ読み直すより、「処分性あり/なし」を表で一気に見直すほうが効率的です。この記事では、試験で繰り返し出ている判例を12個に絞り、結論と一言の理由を1枚の表にまとめました。寝る前の10分で見返せる量にしています。
そもそも「処分性」とは何か
出発点になるのは、大田区のごみ焼却場の設置が争われた最高裁昭和39年10月29日判決です。判例は、処分を「公権力の主体たる国または公共団体が行う行為のうち、その行為によって、直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することが法律上認められているもの」と定義しました。
この定義を分解すると、試験で使うチェックポイントは次の3つです。
- 公権力性:行政が一方的に行う行為か(私法上の契約ではないか)
- 直接性・具体性:特定の人の権利義務に直接かかわるか(不特定多数への一般的な定めではないか)
- 法的効果:その行為で権利義務が形成・確定されるか(事実上の行為や行政内部の行為ではないか)
試験で問われること
処分性の問題は、ほぼ次の3つのパターンで出ます。
- 判例の結論(あり/なし)をそのまま問う肢
- 判例変更があった論点(土地区画整理事業の事業計画決定)で、古い結論を正しいとする肢
- 「なし」とされた理由の言い回し(多肢選択式の空欄にもなりやすい)
つまり、まず結論を正確に、次に理由を「一言」で言えるようにしておけば、択一でも多肢選択でも対応できます。
処分性の判例12を1枚の表で
| 行為(判例) | 処分性 | 一言の理由 |
|---|---|---|
| ごみ焼却場の設置行為(最判昭39.10.29) | なし | 設置は町の内部行為と私法上の契約の積み重ねで、直接国民の権利義務を形成しない |
| 墓地埋葬法に関する通達(最判昭43.12.24) | なし | 行政組織の内部の命令で、国民を直接拘束しない |
| 用途地域の指定(最判昭57.4.22) | なし | 不特定多数に向けた一般的・抽象的な効果で、法令に似る |
| 開発許可の前提となる公共施設管理者の同意拒否(最判平7.3.23) | なし | 同意を拒否しても、開発行為を禁止・制限する効果はない |
| 供託金の取戻請求の却下(最大判昭45.7.15) | あり | 供託官の却下は行政処分として扱われる |
| 輸入禁制品に該当する旨の通知(最判昭54.12.25) | あり | 通知によって実質的に輸入ができなくなる |
| 第二種市街地再開発事業の事業計画決定(最判平4.11.26) | あり | 土地収用法の事業認定と同じ効果をもつ |
| 土地区画整理事業の事業計画決定(最大判平20.9.10) | あり | 換地処分を受けるべき地位に立たされる。昭和41年の「なし」の判例を変更 |
| 二項道路の一括指定(告示)(最判平14.1.17) | あり | 個々の土地に具体的な私権の制限が生じる |
| 病院開設中止の勧告(最判平17.7.15) | あり | 従わないと保険医療機関の指定を受けられない結果につながる |
| 登録免許税の還付通知をしない旨の通知(最判平17.4.14) | あり | 簡易迅速に還付を受けられる手続上の地位を否定する |
| 保育所を廃止する条例の制定(最判平21.11.26) | あり | ほかの処分を待たずに、特定の保育所の児童・保護者の法的地位を奪う |
覚え方のコツは、「なし」の4つを先に固めることです。残りは「あり」と覚えておけば、12個のうち4個だけ例外として押さえれば済みます。
「あり/なし」を見分ける3つの質問
表にない判例が出たときは、次の3つの質問を順に当ててみてください。
- だれに向けた行為か:不特定多数への一般的な定め(用途地域の指定など)なら「なし」に傾く
- 行政の内部で完結していないか:通達や内部の手続(ごみ焼却場の設置、同意の拒否)なら「なし」に傾く
- その行為のあと、国民の地位が確定してしまうか:後の不利益と直結する(勧告→指定拒否、事業計画→換地)なら「あり」に傾く
3つめの「後で争うのでは遅いか」という視点は、平成以降の判例が処分性を広げてきた流れそのものです。迷ったら、ここを手がかりにしてください。
ひっかけになりやすい3つのポイント
1. 「勧告」なのに処分性あり
病院開設中止の勧告は、形式的には行政指導です。それでも、従わなければ保険医療機関の指定を受けられないという結果と結びつくことから、処分性が認められました。ただし、行政指導一般に処分性があるわけではありません。「行政指導には処分性が認められる」と一般化した肢は誤りです。
2. 土地区画整理事業は判例変更
昭和41年の判例は、事業計画を「青写真」にすぎないとして処分性を否定していました。平成20年の大法廷判決がこれを変更し、処分性を認めています。「事業計画の決定は青写真にすぎず処分性はない」という肢は、現在の判例では誤りです。
3. 条例は原則なし、でも保育所廃止条例はあり
条例は一般的・抽象的な定めなので、原則として処分性はありません。保育所廃止条例は、特定の保育所を廃止する内容で、ほかの処分を待たずに入所中の児童らの地位を直接奪う点が例外とされました。
処分性とセットで見直したい論点
処分性は、取消訴訟の入口の論点です。入口のあとに続く論点も、同じ直前期にまとめて見直しておくと得点がつながります。
残り4日での使い方
- この表を寝る前に1回だけ見返す(理由の列は声に出して読む)
- 肢別・過去問で「処分性」の問題だけを抜き出して解き直す
- まちがえた判例は表に印をつけ、翌日はその行だけ見る
直前期の教材の絞り方は、直前期は教材を「3つ」に絞るにまとめています。肢別の回し方は肢別を1日100問ずつ解く方法、行政書士の記事全体は行政書士まとめからどうぞ。
よくある質問
Q. 判例の年月日まで覚える必要はありますか?
A. 本試験で年月日そのものが問われることはまれです。直前期は結論と理由の言い回しを優先してください。年月日は、判例変更の前後(昭和41年→平成20年)を区別するときに役立つ程度で十分です。
Q. 行政指導に処分性はありますか?
A. 原則としてありません。病院開設中止の勧告のように、後の不利益と強く結びつく場合に例外的に認められました。
Q. 処分性がないと裁判で争えないのですか?
A. 取消訴訟はできませんが、当事者訴訟(公法上の法律関係に関する確認の訴え)など、別のルートで争える場合があります。
まとめ
処分性は「なし」の4つ(ごみ焼却場・通達・用途地域・同意の拒否)を先に固め、判例変更の土地区画整理と、例外の勧告・保育所廃止条例を押さえれば、12個は表1枚で整理できます。残り4日、この表を最後の見直しに使ってください。

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